東京地方裁判所 平成8年(わ)1209号 判決 1996年10月30日
裁判所書記官
宮島恒雄
本店所在地
東京都文京区小石川二丁目一七番六-四〇七号
有限会社
サン・コーポレーション
(右代表取締役 松山浩次)
本籍
横浜市港北区日吉本町三丁目九三六番地
住居
川崎市宮前区小台一丁目七番地五 ウインザーハイム鷺沼パストラル四〇七
会社役員
松山浩次
昭和二二年五月二二日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官石垣陽介、弁護人山田宰各出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人有限会社サン・コーポレーションを罰金三五〇〇万円に、被告人松山浩次を懲役一年二月にそれぞれ処する。
被告人松山浩次に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社サン・コーポレーション(以下「被告会社」という)は、東京都文京区小石川二丁目一七番六-四〇七号(平成六年四月二四日以前は同都同区春日二丁目二三番一一-八〇三号)に本店を置き、石油及び日用品雑貨の輸入販売等を目的とする資本金四〇〇万円の有限会社であり、被告人松山浩次(以下「被告人」という)は、被告会社の取締役として、被告会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 平成四年八月一日から同五年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億一二九四万六六九三円(別紙1(1)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年九月二九日、同都同区春日一丁目四番五号所在の所轄小石川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一六七六万三三一一円で、これに対する法人税額が五五二万四六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第一四七八号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四一五九万一五〇〇円と右申告税額との差額三六〇六万九〇〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ
第二 同五年八月一日から同六年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三億八九〇三万一七九九円(別紙1(2)の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、同年九月二九日、前記小石川税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六九九五万六八〇八円で、これに対する法人税額が二六九一万二四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億四五一一万二九〇〇円と右申告税額との差額一億一八二〇万〇五〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書三通
一 高木征洋、森純光、田島久則、山本忠義及び後根敏郎(但し、謄本)の検察官に対する各供述調書
一 小沢孝夫の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 大蔵事務官作成の仕入高調査書、謝礼金調査書、受取利息調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書及び控除所得税調査書
一 検察事務官作成の平成八年二月二七日付け捜査報告書
判示冒頭の事実について
一 登記官作成の登記簿謄本
判示第一の事実について
一 押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押第一四七八号の1)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の割引債券償還益調査書及び事業税認定損調査書
一 検察事務官作成の平成八年四月五日付け捜査報告書
一 押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)
(法令の適用)
一 罰条
1 被告会社
判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)
2 被告人
判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項
二 刑種の選択
被告人につき、いずれも懲役刑
三 併合罪の処理
1 被告会社
刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下、同様)四五条前段、四八条二項
2 被告人
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)
四 刑の執行猶予
被告人につき、刑法二五条一項
(量刑の理由)
本件は、石油の輸入販売等を目的とする被告会社が、二事業年度にわたり合計一億五四〇〇万円余の法人税を免れた事案である。右のとおりほ脱税額は高額で、ほ脱率も通算約八二・六パーセントと高率である上、その主たる手口は、実際に取引のない会社に対し、ガソリン市況調査費や業務代行料を支払ったとして架空仕入高を計上した上、右会社から手数料を差し引いた残額を返還させ簿外資金として蓄えていたというもので、誠に計画的かつ悪質である。また、脱税の動機をみても、被告人は、取引先と取引を継続するためには取引関係者から要求されるままに謝礼金を支払うしかなく、そのための資金を捻出する必要があったなどと述べているが、たとえそのような事情があったにせよ脱税が許容されるはずもなく、格別斟酌するに値しないものであって、これらの諸点からすると被告人及び被告会社の刑事責任は重いというべきである。しかしながら、他方、被告会社はその後修正申告の上本件に関する本税、延滞税等を完納していること、被告会社は本件が発覚したことにより、取引先から取引を停止され経営不振に陥るてど、既に相応の社会的制裁を受けていること、被告人が本件各犯行を深く反省していること、被告人には前科前歴が全くないこと、その他被告人の家庭環境など、被告人及び被告会社のために酌むべき諸事情も認められる。そこで、当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮し、主文のとおり量刑した次第である。
よって、主文のとおり判決する。
(求刑 被告会社・罰金四五〇〇万円、被告人・懲役一年二月)
(裁判官 平木正洋)
別紙1(1)
修正損益計算書
<省略>
別紙1(2)
修正損益計算書
<省略>
別紙2
ほ脱税額計算書
有限会社サン・コーポレーション
<省略>
有限会社サン・コーポレーション
<省略>